オーストリアでの撮影
オーストリアの山岳道路
オーストリアのアルプスは車の走行シーンの天国
最終更新日: 2021年02月04日
最終更新日: 2021年02月04日
オーストリアについて頭に浮かぶ最初の景色の1つは、間違いなくアルプスの雪の山頂であり、そこからは大きく曲がりくねった道が続いています。これらの山岳道路にはそれぞれの違った魅力がありますが、これらすべてに共通するのは、ロケ地として最適であるということでしょう。世界中の他の多くの国とは異なり、オーストリアのこれらのパノラマ道路は私有地にあり、プロダクションにとって多くの利点があります。撮影許可申請などの時間を節約することが出来、頭痛の種も減ります。撮影の取引が、国家の所有権を扱うのではなく、土地の所有者または会社との間での合意のみになるので、交渉がはるかに簡単になります。
オーストリアには、このような種類の道路が多くあります。この記事では、グロスグロックナー、Kaunertaler、Loserのパノラマ道路を取り上げます。この3つの舗装道路は似て非なるものであり、過去数十年間に世界クラスのプロダクションがここで撮影を行いました。
オーストリアについて頭に浮かぶ最初の景色の1つは、間違いなくアルプスの雪の山頂であり、そこからは大きく曲がりくねった道が続いています。これらの山岳道路にはそれぞれの違った魅力がありますが、これらすべてに共通するのは、ロケ地として最適であるということでしょう。世界中の他の多くの国とは異なり、オーストリアのこれらのパノラマ道路は私有地にあり、プロダクションにとって多くの利点があります。撮影許可申請などの時間を節約することが出来、頭痛の種も減ります。撮影の取引が、国家の所有権を扱うのではなく、土地の所有者または会社との間での合意のみになるので、交渉がはるかに簡単になります。
オーストリアには、このような種類の道路が多くあります。この記事では、グロスグロックナー、Kaunertaler、Loserのパノラマ道路を取り上げます。この3つの舗装道路は似て非なるものであり、過去数十年間に世界クラスのプロダクションがここで撮影を行いました。
グロスグロックナー山岳道路
この山岳道路は標高3798メートルの、オーストリア最高峰のグロスグロックナー山の山頂にあります。プロダクションが最初に注目すべき点は、道路の全長と標高の高さです。この道路は、標高750メートルの地点から48キロメートル近く上ると、36番目のヘアピンカーブでの標高は2500メートルにも達します。標高が高くなるにつれて変わる景色では、多種多様なシーンを撮ることが出来ます。典型的な緑の山の背景と共に、雪に覆われた山肌、または雲に隠れた山頂を見ることができます。これらの道路の多くは私有地にあるため、ここでは数え切れないほどの撮影が行われています。ボリウッドのスーパープロダクションや車のコマーシャルなどです。
道路の話は1930年代にさかのぼります。この時期に個人の車の数が増えたため、舗装道路の需要も増えました。そのため、アルプスを通過するザルツブルグとカリンティアの地域を結ぶ道路の必要性が、グロスグロックナー山岳道路を建設する動機となりました。建設に当たって、そのような投資が十分な利益をもたらすのか疑問視する声もあがっていましたが、それにもかかわらず、彼らはわずか3メートルの幅で計画された道路を敷設し始めました。作業が進むにつれて、道路の交通量が当初の予想よりもかなり多くなることが明らかになったため、建設が終わる前に道路を6メートルに広げることに決めました。20年後、大規模な改修の末に最終的な幅は7.5メートルに達しました。
道路は1936年に完成しましたが、その人気の高まりにより絶え間ない改修が行われ、今日まで補修作業が続けられています。面白いことに、開通以来、レーストラックとして複数回使用されてきましたが、これは他の有名なヨーロッパの道路とは異なり、伝統的なものとはなりませんでした。高速道路の建設により、その機能は長年にわたって変化しました。たとえば、多くの自動車メーカーは、未公開のモデルで曲がり角や傾斜などを走るテストを行なっています。そのため、これらの蛇行した道路には奇妙なカモフラージュのテスト用の車を多く見かけます。また、パノラマ道路では毎年いくつかの自転車競技が行われています。
グロスグロックナー山岳道路の大きな利点の一つは、多くのレストランや休憩所に隣接する大きな駐車場があり、大型車を停めることも出来るので、そこに撮影の拠点を置くことが出来ることです。道路が私有地にあることのもう1つのメリットは、多くの場合、メンテナンスが行われていること、舗装が綺麗で路面が汚れていないこと、ガードレールも近代的であることです。このよく発達したインフラのもう1つの注目すべき点は、道路脇に1本の街灯柱もケーブルも見えないことです。これにより、景観の価値と撮影のシンプルさがさらに高まります。
山岳道路は位置する場所によって様々なセクションに分かれています。元々道路は山を越える目的で作られたため、メインルートは南北を縦断する道路で、その他のセクションそれぞれの山腹の異なる側にあります。北部のセクションは比較的まっすぐですが、丘陵セクションでは、何度も急カーブを曲がり、山肌を這うような道路では、マーモットや山羊だけでなく、アルプスに不可欠な牛も見ることが出来ます。
標高の高さによる極端な気象条件のため、雪などで道路は11月から5月まで閉鎖されます。開いている6か月は、天気に関して2つの期間に分けることができます。春秋の期間と夏の期間。6月から8月の夏の期間は、気温は頂上付近でほぼ0度ですが、更に上に行くと幾分暖かく、平均で10°Cほどになり、1000メートル付近では15°Cから20°C程度になります。一方、春と秋は温度が低く、標高が低い地域でも10°Cに満たず、標高が高い地域では0°C未満になります。さらに、これらの月の半分は雨が降る確率が高くなります。しかし、夏時間の切り替えのおかげで日照時間の不足はなく、雲が太陽を隠さない限り、6月には一日の日照時間が15-16時間にもなります。
山岳道路に最も近い大都市はザルツブルグで、車で約3時間(197 km)離れていますが、快適で質の高い宿泊施設を探しているのであれば、わざわざ遠くまで移動する必要はありません。山道の両端にある町には、撮影クルーの宿泊のニーズに応える4つ星ホテルが数多くあります。
Kaunertaler氷河ロード
道路は民間企業が所有しているために特定のルールが適用され、通常よりも撮影の組織化が大幅に容易になっています。したがって、この道路と周辺の湖が多くのプロダクションに利用されているだけでなく、世界的な大ヒット映画「007:スペクター」のシーンにも登場することは驚くことではありません。
「トリプルX:再起動」や「Bergkristall」、「Yoko」など、周辺の山でかなりの数の成功した映画が撮影されたことも言及しておきます。これらはすべて、道路が撮影に価値を提供するだけでなく、道路を取り巻く景観とインフラストラクチャにも価値があることを示しています。ドイツの大人気テレビシリーズもこの場所を最大限に活用しました。たとえば、「Die Bergretter」と「Der Bergdoktor」という番組では、撮影クルーがこの山を繰り返し訪れました。また世界的に有名なCafé Royalは、Kaunertaler道路にほど近い138ヘクタールもの巨大なスキーリゾートでロビー・ウィリアムズと撮影をしました。
Kanunertaler氷河につながるパノラマ道路の機能は、グロスグロックナーとは大きく異なります。後者が2つの都市を結ぶ一方、Kanunertalerは山の頂上の氷河へ向かう道路であるためです。そのため、1270メートルの開始地点から魔法のルートを通り、「兄弟道路」よりも早く2750メートルの高い地点に到達することが出来ます。グロスグロックナー山岳道路よりやや短く、全長26キロメートルの間に29箇所カーブがあり、道路幅もかなり狭くなっています(幅約7メートル)。
道路のもう一つの特徴は、長さ6 kmのゲパチュスタウゼー湖です。この湖は急斜面で風が強い山肌に挟まれた細長い湖で、パノラマ道路は湖の西側を通り山頂まで続いています。この湖は人工湖で、600メートル幅と130メートル幅のダムもあります。
グロスグロックナー山岳道路と比べて明らかな撮影の利点は、ここでは一年中撮影が出来るということです。
また、雨の日が少ないため、グロスグロックナー山岳道路よりも気象条件が良好であり、4月から10月までの間、平均気温は約1200メートル地点で20℃、それより高い地域では15℃ほどです。冬の間は、標高が低い地域では5°C程度ですが、高い地域ではほぼ常に気温は0℃付近です。また、積雪量が十分にあるため、スキーリゾートを運営する会社によって10月から5月まで保証されています。
道路の雰囲気や印象はグロスグロックナー山岳道路とは全く異なります。湖岸沿いのセクションの始まりにのみ道路標識があり、さらに曲がりくねった道の上の方には何もなく、ガードレールはあるとしても古い木製タイプです。道路のあちこちに亀裂も見られるため、現代的なグロスグロックナー山岳道路と比較して、より無骨でユニークな印象があります。
グロスグロックナー山岳道路の周辺には、落葉樹がほんの数本生えている程度で、主にオープンエリアが広がっているため、道路の周囲の植生にも大きな違いが見られます。ここは常緑樹に囲まれているため、より閉鎖的で落ち着ける雰囲気がありますが、場所によりオープンな部分もあります。
ここの電線の状況はグロスグロックナー山岳道路と同様に、街灯もケーブルも見当たらないため、視野を台無しにしません。また、野生生物も類似しています。
この道路はやや規模が小さく、より自然の中にあるため、道路の始まりと終わりの部分を除いて、道路脇に撮影用などに大きなベースを設けることが出来る休憩場所や広い場所はありませんが、ハイキングコースの出発点や湖のほとりに小さな休憩ポイントは多数あります。
最寄りの都市はザルツブルグで、約290キロ離れています。車で約3時間半かかりますが、グロスグロックナー山岳道路の場合と同様に、ザルツブルグまで行って宿泊施設を探す必要はありません。パノラマ道路の入り口からわずか10分のところに多数の4つ星ホテルがあるため、さらに特別なニーズを満たすことができます。
Loserパノラマ道路
前の2つの大きな山岳道路と比べて、Loserパノラマ道路は多くの点で異なります。数字の点でいうと、長さが9キロメートル、最高地点の標高が1600メートルしかないため、他と比較して小規模です。しかし、860メートルの出発地点から山頂までの旅では15回曲がり、下方の谷に広がる見事なアルタウス湖を眺めることができます。
このパノラマ道路についてはあまり知られていないと断言できます。ここでは他のパノラマ道路のように、あらゆる曲がり角で有名車ブランドのコマーシャルを撮影している場面にぶつかることはありません。広い緑のエリアが消え、山腹が道路をほぼ全面に渡って深く包み込むため、常緑樹の緑が道路の両側に沿って続いていますが、利用できるオープンスペースも多くあります。街灯柱やケーブルで景観が台無しにされることもなく、荒い岩がむき出した山肌を見ることも出来ます。
道路の幅は一定ではなく、2台の車が余裕ですれ違える区間もあれば、1台の車が通るのさえやっとのところもあります。この多様性がこの道路の魅力を深めており、ここだけでいくつもの撮影の可能性を探ることが出来ます。
道路は穴などがないいいコンディションを保っており、ペイントは施されていませんが、舗装の質は良好で、ガードレールも新しい鉄製です。道路脇には数カ所小規模のベースを設置することが出来る場所がありますが、全長が9キロメートルしかないこともあり、大きな撮影拠点を設置するには、道路の終点のLosenhütteか道路の始まりの地点の町を選ぶしかありません。
道路は山の南側と南西側にのみ通っているので、私たちは一瞬でも見事な光景を失うことはなく、気温もずっと低いのでより快適です。5月から10月まで開通していますが、天候は短期間でも大きく変化します。日照時間や降水量は前述の場所と非常によく似ており、平均すると日数の半分には何らかの形の降水があります。
道路自体が始まるのはアルトアウスゼーで、ザルツブルグからわずか85キロメートル、車で1時間半ほどの町です。しかし、ザルツブルグに宿泊するのは間違いです。比類のない雰囲気と絵のように美しいアルトアウス湖の岸辺の景色を望む4つ星ホテルがあり、ゲートからもわずか数分です。
アルプスの雪に覆われた山頂と緑豊かな丘は、太古の昔から世界中の人々にとって傑出した魅力のある場所で、これら山岳道路のおかげで、オーストリアの山の価値を表す映像を人々に提示することができます。大規模なプロダクションや数日間続く写真撮影など、アルプスのパノラマ道路はどんな挑戦も受け入れる準備ができています。