ハンガリーでの撮影

狼、象、鹿、犬などなど

ハンガリーで訓練を受けた動物との撮影の大きな可能性

国内外の様々な映画制作チームがハンガリーを撮影場所として選ぶのには多くの理由があります。ロケ地の多様性とアクセスのしやすさ、そして生産コストの低さに加えて、野生動物と一緒に撮影できる機会があることも要因となります。インサイトの記事では、ハンガリーの動物トレーナーがいなければできなかった、国内外の作品について洞察しています。さらに、撮影のためにハンガリーで用意できる動物の種類についても記述しています。

国内外の様々な映画制作チームがハンガリーを撮影場所として選ぶのには多くの理由があります。ロケ地の多様性とアクセスのしやすさ、そして生産コストの低さに加えて、野生動物と一緒に撮影できる機会があることも要因となります。インサイトの記事では、ハンガリーの動物トレーナーがいなければできなかった、国内外の作品について洞察しています。さらに、撮影のためにハンガリーで用意できる動物の種類についても記述しています。

どの動物も無傷でなくてはならない

まず、撮影用の動物の利用の可能性と共に、撮影を安全に、円滑に、そして実りある形で実行するために不可欠なインフラについても説明したいと思います。American Humane Associationによって作成された動物を保護するための安全ガイドラインは、動物が撮影に耐えうる健康条件および安全条件を定義しています。ハンガリーの動物取扱者も、これらのガイドラインを基本的な基準と見なしています。

動物との共同作業を始めるために不可欠な条件は、厳格な規則によって規制されています。ガイドラインでは、ロケ区域は専門的に囲われなければならず、動物は絶えず監視されなければならず、獣医はその場所にいなければなりません。さらに、咬傷などの事故の場合、事故を引き起こした動物に関するすべての情報が傷の正しい治療のために必要になるので、すべての動物の予防接種証明書が必須となります。

動物の撮影場所への移動、または休憩時や撮影終了後には特別な車両が必要となります。また動物が使用されていないとき、撮影クルーから離れて静かに休ませるための広い場所を用意する必要があります。

動物の作業負荷を規定する特別な規則もあります。そのため、例えば、大変なシーンを何度も撮影する必要がある場合は、十分な休憩時間を設ける必要があります。しばしば「動物の代役」が用意されることもあります。さらに、騒々しいシーンの場合は、激しい騒音によって動物の負担にならないよう、後から音響効果を加えることが推奨されています。

ハンガリーの狼男

野生動物は基本的に本能で生きているので、一緒に撮影するのは簡単なことではありません。例えば狼などは同種である犬とは異なり人間と相互依存していないので、飼い慣らすことが難しく、それらを訓練することは莫大な仕事となり、多くの経験と専門的知識を必要とします。

狼男とも呼ばれる有名なホルカイ・ゾルターンは、国内外のプロダクションのための動物のトレーニングや調整を行っています。たとえば有名な映画「ヘラクレス」を制作したSummit EntertainmentやMillennium Films co-production、「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」を制作したUniversal Pictures、および「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」を制作したMultimedia Film Productions Studioなどへ動物を提供しました。

ゾルターンはHorkai Training Centerを設立し、ハンガリーの国境近くの小さな街の広大な土地にオオカミ、トナカイ、クマ、オオヤマネコ、アライグマなどを飼っています。そして過去15年間にわたり、映画制作に必要な包括的な動物教育をし、国内外の映画制作のための動物の提供において主導的な役割を果たしてきました。

Youtube ホルカイトレーニングセンター

動物が完璧に演じることができる秘訣は何かと尋ねられたとき、彼は常にモチベーションを強調します。「オオカミが彼らの自由な意志で行動していると見えるように、自然なモチベーションで彼らを誘導する必要があります。」

動物の最もやる気を起こさせるツールはもちろん、餌です。

餌につられて

シーンに必要なアクションを実行するための方法のひとつに、トレーナーが動物に餌を与える場合があります。たとえば、オオカミが野外で猛烈な勢いで馬を追いかけるシーンでは、馬の背中に肉片を付けて、疾走する馬をオオカミが追うように撮影しています。その場合、馬の方も追いかけてくるオオカミを怯えないように躾ける必要があるので、このようなシーンを撮影するためには多くの訓練が必要となります。元々オオカミは潜在的に獲物として馬を見ることがないので、馬の背中に肉をぶら下げることによって迫力ある狩りのシーンを撮ることが出来るのです。

また、オオカミとの撮影を成功させる方法について、もう一つ刺激的な業界秘密があります。「Eternal Winter」というハンガリーの映画では、スターリン時代のソビエト連邦の中心部にある強制労働収容所での物語が描かれています。家族から引き離され、何年もの間収容所に入れられ、炭鉱で働かなければならなかった中年の女性の運命。映画の中で、オオカミが驚くほど震え上がるシーンがあります。このために、トレーナーは50キロの塊肉を用意しました。それは食べている間に動物の口から垂れ下がらないように冷凍されていました。 彼はそれを地面に固定し、動物が持ち上げて全部を一度に食べることができないようにしました。オオカミが食べ始めたとき、思い通りに食べられないことで期待通りのうなり声を録ることが出来ました。これはオオカミの獲物を守る本能を生かした方法です。

2008年のハンガリーの犯罪映画「The Investigator」の中で、ゾルターンのオオカミが現場で人間を引き裂くシーンがありましたが、これも難題に挑戦したものでした。映画は母親の手術代を稼ぐため、主人公の平凡な日常がひっくり返されていくストーリーですが、映画のシーンの1つに、酔っ払いが動物園のオオカミのテリトリーに迷い込み、引き裂かれてしまうという場面があります。訓練されたオオカミを使って撮影に臨んだにも関わらず、この特定のシーンのために更なる訓練が必要でした。現場での撮影に備えて、トレーナーは生の肉片を自分自身に縛りつけ、それぞれ狼たちに正確にどこを噛めばいいのかを教えました。

最後に、走って跳躍するオオカミを下からのアングルで撮った「デビルクエスト」というアメリカの映画を紹介したいと思います。ゾルターンは、テーブルの上に肉を置き、テーブルの下からカメラを回すという提案をしました。しかし、オオカミはお腹を空かせていたにも関わらず、野生の狩りの時のように俊敏に走らせることは出来ませんでした。結局、メスの犬を囮にして走らせることに成功しました。

最後に、走って跳躍するオオカミを下からのアングルで撮った「デビルクエスト」というアメリカの映画を紹介したいと思います。ゾルターンは、テーブルの上に肉を置き、テーブルの下からカメラを回すという提案をしました。しかし、オオカミはお腹を空かせていたにも関わらず、野生の狩りの時のように俊敏に走らせることは出来ませんでした。結局、メスの犬を囮にして走らせることに成功しました。

Youtube 「心と体と」 VFX

動物の主人公は、ホルカイ・ゾルターンの訓練を受けたトナカイのPicúrとGóliátでした。Góliátは、撮影が始まった頃はまだ慣れ始めたばかりでした。人間の手から食べ物を食べることを覚えたばかりのトナカイと撮影するのは非常に困難でした。トナカイは家畜として飼育されたことがないので、犬のように言うことを聞くわけがありません。そのため、雌鹿が雄鹿の首を抱きしめる必要がある重要な場面の1つでは、ゾルターンはオオカミの時と同じようにフードトリックを使わなければなりませんでした。雄鹿の背中にトウモロコシをまぶし、雌鹿があたかも抱きしめているように見せることに成功したのでした。

Youtube ハンガリーの狼男

ブダペストの街を徘徊する犬

ハラース・アルパードは、Gödöllő Dog Sport Centerの指導トレーナーであり、1999年から撮影のための動物を特別に訓練しています。彼の動物たちは、2014年に公開された「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」と呼ばれる大規模長編映画で見ることができます。撮影の際、同時に200匹もの犬を指揮しました。これは記録的な数です。雑種犬の飼い主にだけ重税を課す、という特異な設定のこの映画の中では、何百もの犬が路上に放置されています。主人公リリの父親も、素直で賢い飼い雑種犬ハーゲンを捨ててしまいましたが、リリはハーゲンを探しに出かけます。その間、ハーゲンによって導かれた捨て犬のパックは革命を開始し、自分たちを見捨てた人類への反乱を企てる、という社会派映画です。

Youtube 「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」のムービークリップ 

280匹もの犬がロケに参加しました。そのうち約50匹の犬はGödöllő Dog Sport Centerからでしたが、これらは撮影で専門的に訓練された犬たちでした。その他の犬は、さまざまな犬の保健所から選ばれ、後に訓練されて合流しました。4ヶ月間の訓練セッションが保健所で始まり、その後訓練所での厳しいトレーニングが続きました。そして最大の難題であるチームと犬との共演などが動物トレーナーのセンターで行われましたが、群れの中の競争を抑えるのも大変な仕事でした。映画の撮影中にシーンが何度も変更されたため、トレーニング期間が終わっても作業は終了せず、常に新しい動きを犬に教える必要がありました。

Youtube 「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」メイキング

与えられた場面で犬から様々な動作を引き出すことができるようにするために、トレーナーは無数のトリックを考えなければなりませんでした。例を挙げると、彼らが主役犬であるハーゲンに麻酔の注射をするシーンでした。麻酔を打たれた後のリアクションをリアルにするため、彼らは犬が嫌がる匂いの毛皮コンディショナーをスプレーし、それから「地面に擦り付けなさい」と命令しました。するとハーゲンは地面に転がり、麻酔が効いていく様子を見事に演じたのでした。

映画の中の壮大なシーンの1つでは、ブダペスト最大のトンネルを走る犬の群れの中で何匹かが撃たれます。動物は撮影中にいかなる傷を負うことも許されていないので、武器の発砲などももちろん禁止されており、そのため発砲の瞬間を知らせるために、手で合図したり音を立てたりして指示しなければいけませんでした。

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」の後、犬のアルパッドは「Paw」というハンガリー映画で、1999年のイズミット地震の際、3歳の小さな女の子を救うために食糧と水なしで瓦礫の下で82時間を過ごして有名になった実在のハンガリーの救助犬を演じました。映像をより現実的なものにするため、ブラショブ地震の現場の瓦礫の中で撮影が行われました。条件の悪い中、まるで本物の救助犬であるかのように廃墟の中で動かすことはトレーナーにとっては難しい挑戦でした。撮影をスムーズにするため、撮影期間の前に、犬は小規模の工事現場の瓦礫で訓練されました。

Youtube 「Paw」 トレーラー

当然のことながら、映画の撮影中は実際に危険な状況だということはありませんでした。そのため、2匹の主役の犬を様々な状況で訓練する必要がありました。たとえば、手の信号に応じてさまざまな強さで吠えること、悲しげな表情を見せること、または遺跡の中から人々を探すことなど。

動物に出来ないことはない

映画界の動物園は広大であり、Bendegúz Körmöcziよりも優れている所を他に知る人はいません。珍しい動物などの撮影が必要になる場合、Bendegúzは国内外の映画制作では不可欠な人物です。飛ばせたい瞬間に飛ぶハエを用意ことができる他の人物を見つけることはほぼ不可能でしょう。彼によると、実はこのトリックはそんなに複雑ではありませんでした。「ハエを少しの間冷蔵庫に入れておきます。冷蔵庫から出したら俳優の手の中に入れるのです。テイクの開始時にはまだそこにいますが、ウォームアップすると飛び去ります。」

Youtube ミニブタのトレーニング

Argosという名前の彼のプードルは、イスラエルの映画界ではベテランですが、宝くじのキャンペーン犬としても有名になりました。その際に車の運転や、サンバの踊り方まで教え込む必要さえありました。さらに、ハンガリーの映画「キンチェム 奇跡の競走馬」では、タイミング良く鳴かせるために雄鶏を訓練しなければなりませんでした。羊のブライアンも彼の教え子で、無数のコマーシャルで主演しています。ベンデグーズが訓練したベータという猫は、スティーブン・スピルバーグの「ミュンヘン」という映画で素晴らしいパフォーマンスを披露しました。さらに、ジェレミー・アイアンズとの共演シーンでは鳩を訓練しました。このシーンでは、俳優の指の先に飛ばなければなりませんでした。

象のサンドラ

ハンガリーの世界的なスター動物について話すとき、1975年生まれのサンドラという名前のゾウを忘れてはいけません。その賢さと巧みな芸のおかげで、ハンガリーのフロリアンリヒターサーカスのゾウは「007 オクトパシー」でも主演しました。また世界的に有名なイリュージョニスト、ハリー・フーディーニの生涯を描いた作品でも、オスカー賞を受賞した俳優のエイドリアン・ブロディと共演しました。

長編映画に続き、象のサンドラはランス・アームストロングのナイキのコマーシャルのようなグローバルブランドのキャンペーンにも登場しました。しかしサンドラはプロフェッショナルであったにも関わらず、アクシデントを起こしてしまいました。2011年にスペインのONCE財団から委託されたブダペスト中心部での撮影に参加した際のことです。ハリウッド映画での撮影経験が数多くあるにも関わらず、サンドラはこの撮影に耐えることはできませんでした。 背中に固定していたロープが緩むと荷物が滑り落ち、驚いたサンドラは交通量の多い市内中心部に向かって飛び出し、通行人にかなりの打撃を与えました。

したがって、動物と一緒に撮影する場合は、様々なシチュエーションを想定しなければなりません。ハンガリーではインフラストラクチャにより、円滑な作業を進めるための必要なすべての条件を満たすことができます。

ハンガリーは国際的な撮影に対して国を挙げてサポートしているだけではなく、数え切れないほどの素晴らしいロケ地を選択出来ます。ハンガリーの動物ハンドラーは、国際基準を満たしており、プロ意識と優れた訓練を受けた野生動物および家畜により撮影の成功に導く貢献をしています。

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