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ハンガリーでの撮影

ブダペストの撮影スタジオ

サウンドステージや撮影機器のレンタル

この記事では、ハンガリーの最大かつ最先端の映画スタジオに関しての詳しい情報をご紹介します。Korda、Origo、Mafilmなどのスタジオが提供するサウンドステージ、野外撮影所、サービスの詳細に加えて、映画撮影の重要なライバル国であるチェコ共和国やルーマニアとも具体的に比較してみましょう。

この記事では、ハンガリーの最大かつ最先端の映画スタジオに関しての詳しい情報をご紹介します。Korda、Origo、Mafilmなどのスタジオが提供するサウンドステージ、野外撮影所、サービスの詳細に加えて、映画撮影の重要なライバル国であるチェコ共和国やルーマニアとも具体的に比較してみましょう。

ハンガリーの撮影スタジオの今と昔

1955年のハンガリーでの撮影風景Photo: FORTEPAN

ハンガリーの映画制作には100年以上もの歴史があり、そのうち数十年はヨーロッパでも最大の映画産業の中心の1つと見なされていました。この地位はロシアの占領後、共産主義政権時代(1945-1989年)の間に失われましたが、その良い評判は残っていました。冷戦中であっても、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「レッドブル」など、ハンガリーでいくつかの大規模な国際映画が撮影されました。このような時代の中でも、特に90年代の民主化の後は、映画産業は他の中央ヨーロッパ諸国でも活発になりました。チェコ共和国は大規模な発展を遂げ、2000年代までにこの地域でもっとも盛んなロケ地になりましたし、ルーマニアも追いつき始めました。そして過去20年間でブダペストは、その既存のインフラストラクチャ、文化的背景、および国と個人の投資家による支援により、過去の栄光を取り戻しました。


ハンガリーは、国家規模で映画製作を支援している国の1つです。たとえば、国外からの映画製作に対して30%の税金還付制度があります。民間投資の最も顕著な成果は、2010年代の初めまでに完成した最先端のサウンドステージです。これらは、ハンガリーが長編映画や大規模な作品に対応できるようになったため、中央ヨーロッパ市場の発展に重要な役割を果たしました。これにより、少し前までは多くの国際的なプロダクションが他の国ではなくハンガリーを選ぶようになっていました。この地域の最大のライバルは、チェコのBarrandovスタジオとルーマニアのCastle Filmスタジオであり、どちらもハンガリーのスタジオと比べると長所もあり短所もあります。

ハンガリーの撮影スタジオの複合施設で特に大規模なものは、Kordaスタジオ、Origoスタジオ、Mafilm スタジオです。これらには国内最大の面積と最高の施設がありますが、もちろん、コマーシャルや小規模な作品に特化した他のスタジオもあります(Lloyd Studio、Studio 4、Stern Studio)。Origo(2011年設立)およびKorda(2007年設立)は、最高の国際基準を満たすことを意図して建設されました。Mafilmには100年以上の歴史があるため、市場での立ち位置が異なります。最初の2ヶ所は、アメリカのスタジオの形態とは異なります。映画の制作は行わず、制作用に資産を貸し出すだけであるのに対し、Mafilmは社会主義時代の最大の映画製作会社の1つであり、さまざまなプロダクションサービスを提供していますが、スタジオの規模や最先端技術となるとKordaとOrigoに遅れをとっています。

Kordaスタジオ

ブダペストから約30キロ(車で約1時間)のEtyekにあるKordaスタジオは、2007年のハンガリーにおける最大の投資の1つであり、建築費は約9000万ユーロにも上りました。スタジオは広大な敷地に6つのサウンドステージ、2800平方メートルの宿泊施設、7000平方メートルの倉庫やワークショップ、15ヘクタールの野外スタジオ、10ヘクタールの建築済みの屋外セットを擁しています。

チェコ共和国にある最大のライバルであるBarrandovスタジオの13ヶ所あるサウンドステージに比べると、6ヶ所のサウンドステージはそれほど多くはないように思えるかもしれませんが、チェコのスタジオの施設の詳細を考慮する必要があります。13のサウンドステージのうち、4つは実際には施設外にあり、現在は1年中地元の制作のために予約で埋まっています。さらに、一番大きいスタジオ(4100平方メートル)を使用する場合は、他の3つのスタジオを結合する必要があるため、同時に利用できるスタジオの数が減少します。対照的に、Kordaスタジオの6つのサウンドステージは完全に独立した建物に収容されており、その中には世界最大のサウンドステージの1つであるステージ6(6000平方メートル)があります。床から天井まで20メートルもの高さがあり、11 x 8メートルの巨大な出入り口、10のキャットウォークなど、規模と機能が兼ね揃えられています。500キロの積載量を持つ150の懸架装置を備えたサスペンションシステムもスタジオ全体に設置されています。

2015年のアメリカのSFシリーズ「マーズ火星移住計画」はKordaスタジオで撮影されました
Kordaスタジオのステージ 1 には窓付きのプールが備え付けられています

Kordaスタジオの他の5つのサウンドステージのサイズは、1000〜2400平方メートルであり、すべて上記のステージ6と同じ基準に従って構築されました。すべてにキャットウォークとサスペンションポイントが張りめぐらされ、サイズが小さいために高い防音性があります。さらに、ステージ1では、水中窓を備えた10 x 10 x 4メートルのプールがあり、水中でのショットを簡単に撮影することが出来ます。ルーマニアのCastle Filmスタジオにも20 x 10 x 4メートルのプールがありますが、前述のチェコのBarrandovスタジオにはこのような設備はありません。

Youtube KORDAスタジオ見学

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」 は、このために造られたニューヨークの街並みのセットで撮影されました

Kordaスタジオのニューヨークセットは、「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」の制作用に建築され、その後の撮影に合わせて変更および拡張されています。現在、長さ120メートルの主要道路(幅14.5メートル)、幅3および4メートルの歩道とその他2つの60メートルの脇道で構成されています。1ヘクタールの広さのルネッサンスセットは、フランソワ・セギンがテレビシリーズ「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」のために設計したものです。このシリーズの一部がハンガリーで撮影されました。このセットは、19の建物(町の中心の建物、ローマ宮殿、売春宿、鐘楼など)と無数の路地と民家などで構成されています。森や湖のほとりには13から14世紀の村もあり、12000平方メートルもの面積を誇ります。これらの建物の大部分には、きちんと内装も施されています。

テレビシリーズ「World Without End」で使われた13から14世紀のセット
テレビシリーズ「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」 はKordaスタジオのルネッサンスセットで撮影されました

撮影スタジオと並んで、スタジオのエリア内に制作支援スペースもあります。約2800平方メートルの広さにVIPおよび通常の更衣室やトイレ、メイクルーム、衣装保管室、オフィス、会議室、休憩室などが備え付けられています。 これだけでは十分でない場合は、追加で720平方メートルのコンテナオフィスをレンタルできます。もちろん、保管室とワークショップはKordaスタジオ内にあり、ケータリングは1000平方メートルのエリアで150人分提供されていますが、別の建物には75人分のケータリングのための施設があります。設備の整ったポストプロダクションスタジオも複合施設の一部であり、サウンドおよびビデオの編集に最適な49人を収容できるスクリーニングルームも備えています。これは、この地域で最高の設備を備えた現地のポストプロダクションスタジオの1つであり、ハンガリー以外ではチェコのBarrandovスタジオのみとなっています。

上記に加え、よく発達したインフラストラクチャが整備されています。インターネット、通信、24時間365日のオンサイトセキュリティが確保されています。さらに、すべてのステージで直接録音が可能になり、騒音のない空調、換気、リモートコントロールの消火システム、10 GB /秒の冗長光ファイバー、独立した冗長高電圧電源ネットワークが備わっています。

Origoスタジオ

Origoスタジオはハンガリーのもう一つの近代的なスタジオで、2011年に開設して以来、国内外の多くのプロダクションに利用されてきました。このスタジオの立地はKordaスタジオよりも便利で、ブダペストの中心からわずか20分で行くことができます。同じくチェコのBarrandovスタジオはプラハの中心部から同じくらいの距離で、ルーマニアのCastel FilmスタジオはハンガリーのKordaスタジオと同じく首都からは車で1時間ほどかかります。


Origoスタジオはルーマニアのスタジオと同様9つのサウンドステージを所有していますが、後者が11000平方メートルであるのに対し、Origoスタジオは18000平方メートルもあります。この中には200平方メートルのVFXと8つの様々な大きさのステージ(1200から4300平方メートル)、100平方メートルの緑の背景のスタジオ、23 x 18 x 3メートルのプールが含まれますが、プールにはKordaスタジオやルーマニアのスタジオのように窓がありません。

Origoスタジオのサウンドステージでは世界的にヒットした「ブレードランナー2049」も撮影されました

Origoスタジオは新しく建てられた当初から、世界のスタンダードに適合するよう努力しています。空調、音響、防音設備、キャットウォーク、ドアの大きさなどです。建物のレイアウトでさえ、可能な限り騒音を外部に漏らさないため、サービスビルがサウンドステージを囲むように開発されました。

4ヘクタールの野外スタジオがあるにも関わらず、Origoスタジオは前述のスタジオと比べるとサイズやセットに多少遅れをとっています。前述のように、立地はBarrandovスタジオのように便利ですが、Barrandovスタジオには4倍以上の広さの野外スタジオや、以前の作品で作ったセット(ルネサンス時代のイタリアの街並みなど)が残っています。ただし、4ヘクタールのOrigoスタジオの更地の野外スタジオは、新しくセットを組む制作には最適です。例えば2017年に「ブレードランナー2049」を撮影した際には、そこに金属廃棄物置き場を簡単に設置することが出来ました。

Youtube 「ブレードランナー 2049」のメーキング

Kordaスタジオとは異なり、Origoスタジオは幅広いレンタルサービスを提供しています。照明やグリップ装置の他に、トレーラーの種類も豊富です。有名俳優用のトレーラーやプロダクション、衣装、メイクアップトレーラーだけではなく、ゴルフカートやケータリング車まであらゆる選択肢の中から選ぶことが出来ます。同じくルーマニアのCastel Filmスタジオにも100を超える特殊車両があり、さらに幅広い機器のレンタルが行われています。カメラレンタルサービスなども行うブダペストのARRIレンタルオフィスはOrigoスタジオと同じ通りにあるため、非常に便利です。


ハンガリーでは通常スタジオでは機器のレンタルは出来ないため、Origoスタジオのレンタルサービスは例外です。常に最新の機器をレンタルすることが出来ます。ブダペストのスタジオは施設の貸し出しに特化しているため、最大のレンタル会社はスタジオとは独立して運営されており、カメラ、特殊機材、照明、その他すべての映画制作に関わる幅広い選択肢が用意されています。

Origoスタジオの敷地面積は全部で8200平方メートルで、そのうち3700平方メートル分はオフィスがあり、4500平方メートルの倉庫があります。これらの一部の建物は、大工、セットの組み立て、鉄工のワークショップ、車両、小道具、衣装、照明、カメラの保管場所として使用されています。さらに、Kordaスタジオと同様に、業界標準を満たすポストプロダクションスタジオと200人収容のケータリングルームもあります。インフラストラクチャは上記の施設の環境を最高にするべく整えられました。スタジオのエリアでは、高帯域幅の光ファイバーを使用したオンサイトセキュリティとハイテクITサポートが整備されています。

Mafilm

この記事にあるスタジオの中で、国有のMafilmスタジオが最も際立っています。1911年に最初の建物が建てられ、ハンガリーで最も古い映画制作の中心地であり、ハンガリー映画業界の国際的な名声を確立する上で大きな役割を果たしてきました。Barrandovスタジオは1930年代に、Castel Filmsスタジオはソビエト連邦崩壊後の1990年代に事業を開始したため、Mafilmはこの地域では最古のスタジオです。この長い歴史には長所と短所があります。Mafilmは、より近代的なスタジオを持つチェコのライバルと比較して、開発において遅れをとってきました。


スタジオの規模は、Mafilmと他の競合スタジオとの最も目に見える違いです。Mafilmはブダペストに2つのスタジオを持ち、それぞれ830と385平方メートルの敷地面積です。また、ブダペストの中心部から約30分の距離にあるFótという町にもスタジオがあります。ここには、1600平方メートルと1070平方メートルの2つのスタジオがあり、そのうちの一つに55 x 6メートルの屋外グリーンスクリーンがあります。これは国内外のライバルと比較して控えめな数字ですが、代わりに、過去100年にわたる経験と機器のコレクションがあります。このことはチェコのBarrandovスタジオにも当てはまります。

Youtube Mafilmのスタジオ見学

サービスの一環として、彼らはハンガリー最大のコスチュームコレクションを所有しており、100,000着以上の作品がFótの23 000平方メートルの広大な敷地内にあります。これはチェコのスタジオが持つ260,000着のコスチュームに続きます。また、Mafilmは数千個の中央ヨーロッパ最大の武器のコレクションを誇っています。コレクションには、さまざまなタイプとブランド(モーゼル、ウォルター、トンプソン、AK-47など)第一次および第二次世界大戦の時代の銃、ピストル、ライフル、リボルバー、機関銃などがあります。

Mafilmは、映画制作機器のレンタルを行っていませんが、その理由は、レンタル業を国内最大のレンタル会社の1つであるVisionteamに委託しているためです。Visionteamは、サウンドステージを必要としないプロダクションに対しても機器をすべて提供できるため、このシステムは双方にとって有益です。

エイドリアン・ブロディ主演の2013年のテレビシリーズ「フーディーニ幻想に生きた奇術師」のために作られた1900年代のアメリカのセット
ハンガリー、フランス、イギリスが制作した歴史映画は、この第二次世界大戦の強制収容所として建てられたセットで撮影されました

膨大な衣装と小道具のコレクションに加えて、Mafilmの最大の強みは、Fótの敷地内にある野外セットです。ここでは、敷地全体に様々なシチュエーションのセットが建てられており、この点でMafilmはKordaスタジオやルーマニアのCastel Filmsスタジオに匹敵する設備を持っていると言えるでしょう。中世の集落は最も重要で、「推理作家ポー最期の5日間(2012年)、「The Cathedral」シリーズ、NBCの「ドラキュラ」シリーズなどのヒット作にも使われています。この5000平方メートルもあるエリアは、メイン広場、風車、回廊、刑務所、城の中庭、玉座の間、ボートのある運河、そして跳ね橋や城壁まで再現されており、とても人気があります。またその隣には、第二次世界大戦の強制収容所や1800年代のロンドン、イエスの時代のナザレなどの​​セットもあります。また、1900年代のアメリカ西部の町のセットもありますが、ルーマニアのCastel Filmsスタジオにも同じようなセットがあるため、それほど特別なものとは言えません。6.5ヘクタールのグリーンスタジオはOrigoスタジオのものよりは大きいですが、世界的に見るとそれほど特別ではありません。


これまで述べた通り、国によってスタジオの特徴が大きく異なるだけでなく、ハンガリー国内でも異なります。これらすべての側面を考慮しても、どのスタジオが一番優れているのかなどの順位をつけるのは不可能です。それぞれのスタジオに異なった特長や強みがあるため、1つのスタジオをすべてのプロジェクトに最適なものとして選ぶことはできませんが、作品のコンセプトに合致する条件に合うスタジオを必ず見つけ出すことが出来ます。中央ヨーロッパの多様で幅広い選択肢は、映画産業の発展にまさに貢献していると言えるでしょう。

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